「ミケランジェロ プロジェクト」に「黄金のアデーレ 名画の帰還」。
いずれも第二次世界大戦中にナチスに略奪された世界的な美術品にまつわる映画が、時を同じくして公開されます。
「ミケランジェロ・プロジェクト」は、ナチスの略奪した美術品を奪還するためにボランティアで結成された「モニュメンツ・メン」をモデルに、
「黄金のアデーレ 名画の帰還」は、クリムトの代表作「黄金のアデーレ」のモデルになったアデーレの姪がオーストリア政府に返還を要求する、それぞれアプローチは違っていても、背景に「ナチスの略奪」があります。
「ミケランジェロ・プロジェクト」は、昨秋公開予定が直前に公開中止になったいわくつきの映画。
なぜこのタイミングで上映が実現したのか、なぜ同時にこの2本の映画が公開されるのか興味津々です。
なぜヒトラーはこれほどまでに、世界中の名だたる美術品という美術品を略奪したのでしょう。
その鍵を解くのは、ヒトラーの若かりし頃の夢が関係してきます。
ヒトラーは画家になることが夢でしたが、美術学校を2度受けて2度とも落ちています。そんな思いから世界中の美術品を自分の故郷に集めて、大きな美術館を建てることを計画していたのでしょう。
昨日、ヒトラーが10代の頃に描いた絵がテレビで紹介されていました。
上手だけど、人や植物が一切描かれていない、廃墟のような風景画は孤独で冷たい印象。10代にしてヒトラーはヒトラーだった、ちょっとゾッとする絵でもあります。
もしもそのとき彼の絵が認められていたら、美術学校の入学を認められていたら、第二次世界大戦は起きなかったかもしれない、そんな思いが頭をよぎります。
映画の紹介を観て強く感じたことが一つ。
それは、例え残虐な戦いを繰り広げていても、歴史ある建物までは破壊しないこと。
このことを生かして、ナチスの略奪された美術品はドイツの美しいノイシュヴァンシュタイン城に隠され、どの戦争の時かは定かではないけど、かつてルーブル美術館の美術品の数々は、ロワール地方の古城に避難させたと聞いたことがあります。
アジアや中東のように歴史的建物や世界遺産、美術品など、構わず破壊してしまう文化との決定的な違いを感じずにはいられません。
映画としての評価は高くないようですが、それぞれジョージ・クルーニーにケイト・ブランシェット、「黄金の〜」はヘレン・ミレンが出ているのも観たい理由の一つ。
そして、美術好きな人にはまた違う楽しみが隠れている気もします。